NAVI休刊に思う (2010.01.09) [LIFE]
みなさんこんにちは。こないだノーザンWEBのtontonのところにも書きましたが、
自動車雑誌のNAVIの休刊が突然発表されました。
20年以上にわたって、欠かさず購読していた雑誌です。
NAVIはクルマのみならず、クルマを中心にしたライフ・スタイルをテーマにした雑誌でした。
ワタシが読みはじめた時期は、クルマを買う気なんか全く無い、 バイク・オンリーの会社員時代でした。
そういうクルマを買う気なんかないヤツが読んでもおもしろい雑誌だったんですよね。
定期購読を始めた理由はコレの連載がはじまったからなんです。
大好きな矢作俊彦の小説。コレのモデルになったのが、 当時NAVIの副編集長(もしかしたらもう編集長だったかも)だった現ENGINE編集長の鈴木正文。
このヒトのキャラクターが素晴らしかった。
元学生運動の闘士で、東大安田講堂の攻防のときも篭城していたヒトなんですね。
この作品は、そういう実在のスズキさんのキャラをいかした主人公とその息子の、
シトロエン2CVというクルマを使ったロード・ムービー的な小説です。
途中の中古車屋での、“メルセデス”と“ベンツ”の違いの話など、 スズキさん本人を彷彿とさせるエピソードのオン・パレード。
矢作俊彦はこの後も、第二次大戦後に日本が東西に分割統治されていたら、
ということをモチーフにした“あじゃぱん”(コレも傑作)の連載をはじめ、
相当量な執筆活動をNAVIにおいて展開しました。
中でも印象に残っているのが阪神・淡路大震災発生直後の神戸のリポート。
崩れ落ちたヤナセのショー・ルームのぶっとい鉄骨をルーフで支える一台のメルセデスSLの写真。
それにつけられたキャプションの、“隣のトヨタのショー・ルームは跡形も無くペチャンコになっていた。”
という一文。コレ、ちゃんと引用したいと思って掲載された号を探したんですが見つかりませんでした。
ニュアンスはあってるとおもいます。 戦後50年を過ぎても彼我の差はこんなにあるのか、という思い。
その行動力も含め、すごく読み応えのあるルポでした。
ほかにも硬軟取り混ぜた、とても自動車雑誌の枠に収まりきれない連載が多くありました。
そういえば村上春樹のインタビューもあったなぁ。
たしか、イタリア・ギリシャでの暮らしから帰国したくらいの時期のもの。
編集スタッフにも優秀な人材が多く、いい意味で私立文系的な、独特の雰囲気がよかったです。
それに加えて、ダイナミック・セィフティー・テストといった、クルマの安全性能を確かめる検証も独自に続けていました。日本車の輸出仕様と国内仕様の安全装備の違い(もちろん国内向けが手抜き)とか、自動車業界・一般ユーザーに対する真面目な警鐘と啓蒙活動も行っていました。
このへんや、
このへんなど、折に触れて読み返したくなる特集も多かったですね。
今回の休刊の理由は広告が集まらなくなり、採算が取れなくなったことのようです。
自動車業界も未曾有の不況の波を被り、余裕が無くなったのは分かります。
NAVIは実際、批評は辛口で、おべんちゃらの記事は少なかったです。
特にトヨタに対しては相当なことを言いつづけていましたし。
しかし、本当に問題としなければいけないのは別にあります。
これはワタシたち洋服屋にも関わってくることなんですが、いまの若いひとたちの、 ものごとへの興味のありようが大きく変わってきているということですね。
クルマだけではなく、音楽や洋服、 いろんなことに対するこだわりというものが無くなっているような気がします。
音楽でいえば、気に入ったアーティストができれば、すべてのアルバムを聞いてみたい、といったような突っ込んだキモチを持つひとが少ないのではないか?
CDを所有したいとか思うことなく、一曲だけダウン・ロードして聞く、ってなカンジのひとがほとんど。
本などは全く読まず、ケータイやパソコンですべてが完結してしまうしまう世界観。
物質には頼らなくなり、それはそれでクールなんでしょうけど、 なんか古い人間から見るとつまんない気がします。
いわゆる草食系男子なんてのがそんなイメージがありますが、どうなんでしょうかね?
たしかに社会情勢が悪すぎることもあります。
就職したくても、やりたい分野の会社の求人がない。
とりあえず生活するためになんでもいいから仕事をする。
そういう生活の中から、何かを突き詰めたいというような気持が起きづらいのも確かなんです。
ホント、いったいこれからどうなるのか?
なんかきょうは話が暗いな。おまけに長いし。
NAVIの話に戻りますが、次号から若手のシオミさんに編集長が変わり、
リニューアルするということでした。
しかし、あと2冊で終わりになります。
シオミさん、残念だなぁ。今のスタッフの中で、いちばん好きでした。
シオミさんの手になるNAVIをちゃんと読んでみたかったです。
なんならENGINEに移籍してくれないですかね。
こちらが現在、鈴木正文編集長の手掛ける新潮社のENGINEです。
こちらも創刊からほぼ十年。毎号欠かさず読んできました。
スタッフはほとんどNAVIの出身。
NAVI時代も大好きだったイマオさんも副編で活躍しています。
発売日もNAVIとおんなじ。新潟は東京より一日遅れて、毎月27日に発売されます。
至福の27日もあと2回で終わり。
やっぱENGINEだけだと、正直、物足りないんですよね。
こちらはファッションで言えばモードのノリ。
スズキさんのとんがった部分が目立つ誌面になりました。
NAVIが健在ならそれでも良かったんですけど。
できれば今後、NAVIの、ちょっとゆる~いエッセンスが入るといいのにね。
イマオさんがもうちょい前に出ててくれるとうれしいんですけど。
なんかワタシの購読する自動車誌の最後の牙城になってしまいましたから。
スズキさん、がんばってください。
でもNAVIに関わってきたスタッフのみなさんにはありがとうを言いたいです。
おかげで、人生がすこし豊かになった気がします。
NAVIを卒業したヤツで不幸になったヤツはいない、という名言がありましたよね。
どうかみなさんもへこたれずに。
また復活することを心から祈っております。
きょうはホントに長いな。
ありがとうございました。
タナベ
けさのおさんぽ
きょうはまぁまぁ青空が。
でも風はまた強くなって、つめたいです。
このトンビがさっきからちょっかいだすんだよね。
マロはえさぢゃあないからね。
波はあいかわらず。
風が強いから、砂がいっぱい山になってます。
ここもこんなに。
やっぱ冬だね。
さっきのトンビのかわりにカラスにちょっかいだしました。
まだ一月。まだまだ寒いね。
カゼなんかひかないでね。
ぢゃあみなさん、またね。
タナベ マロ
私の興味は主にバイクなので、NAVIは買ったことがないのですが、近所の医者に何冊もおいてあるのを待っている間に読破したり、立ち読みしたり、親しみを感じていた雑誌でした。
一時は月に2、3冊のバイク雑誌を買っていた私も、ここ数年は買った事がありません。これはやはりWebで事足りるようになったことが大きい。特にスポンサーに配慮した当たり障りのない雑誌など、本音のWebにはかないません。
これからの雑誌はWebではなかなかできないような、手間ひまかけた方向性で生き残っていくしかないのだろうか…と考えていたところに、今回のNAVIの休刊。NAVIこそ生き残っていくべき雑誌だと思うのですが。残念です。
by 一読者 (2010-01-09 13:28)
さっそくのコメントありがとうございます。
ホント、おっしゃる通りです。
WEBだけだと、根拠も責任のない言いっぱなしで終わることも多いのが嫌です。
やっぱりちゃんと拠り所をはっきりとした、明確な意志を持った紙の媒体がワタシは好きです。
そういうところは、提灯記事はきっちりそうわかるように書いてますからね。
今回の件は重ね重ね残念です。
タナベ
by northernisland (2010-01-09 13:38)
確かに今は新潟の冬のようにつらい時代ですね、、、、その先に春があることを信じています。まじめなノーザンブログも好きです。
by lotustype45 (2010-01-10 09:58)
lotustype45さん、ありがとうございます。
BICYCLE NAVI、MOTO NAVIも合わせて休刊になるそうですが、
自転車はクルマに較べたら流れはよさそうなんですけど。
ホント、おだやかな春が来るといいですね。
タナベ
by northernisland (2010-01-10 10:51)